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大番長 / 父と娘と母と……男と女と

斬真狼牙 / 旋風寺親娘










 真宿に開けられた穴―――魔界孔を斬真狼牙たちが閉じてから数週間。
 狼牙は日本を統一した総長として、毎日各地を巡る日々忙しい生活を過ごしていた。
 大きな紛争自体は皆無に近いほどなくなり、見事に平和になったが、まだまだ小さな争いは世界中で起こっている。
 そこで今、人望や実力も高くてカリスマ性を持っている仲間たちを各地に派遣して、小さな争いを止めるよう説得させる……。
 ――――という、『後掃除』をしている真っ最中なのだ。
 ……まぁ、説得が必ずしも成功するとは限らないので、実力行使出来る人選もある程度考えてあるのは至極当然のことかもしれない。
 戦力を削ることの無駄と、時間の無駄を省くためになるべく説得で終わらせることが出来る人選で、多数の仲間が各地へ散っている。
 そして、それは何故か皆を纏める役割である総長という座に就いた狼牙までも現場に派遣されていた。

「…………あー、やっと闘京に帰ってきたぜ」

 NAGASAKI、死魔根、京、日奔橋、名児耶を回ってきた狼牙は一人誰に言うでもなく愚痴る。
 若干怒りの気持ちが籠った言葉を吐き捨てながら、闘京にある自宅に向かい足を進め、肩を回し首を鳴らしていた。
 各地で起こったイザコザを一人で解決してきた狼牙としては、疲れが溜まっていたのだろう。
 派遣される人は大抵は二人一組なのだが、何故か狼牙は一人単独で行動することを義務付けられていた。
 何故自分がこんな目に会うのか、何故一人でこんなことをしなければいけないのか。
 総長になることを推した自分勝手な兄のことを愚痴りながら、狼牙は拳に力を入れて兄である斬真豪を憎んだ。

「あのクソ兄貴、てめぇのほうが強ぇくせに何で俺が総長なんてめんどくせぇことを……」

 怒りボルテージが急上昇している今の狼牙の前に、小さな争いでも起こればどうなるのかは想像するに難くない。
 暫く耳にしなかったホワイトファングの脅威を思う存分発揮することだろう。

「――――ぱぁぱ~」
「ん……?」

 その一声。
 小さな川が流れる辺を歩いて帰路に着こうとしていたときのことだった。
 川を挟んだ対岸沿いの河原―――それも、若干後方から聞こえた幼い子供の声。
 背後から聞こえたその〝懐かしく思える〟声に狼牙は思わず振り向く。
 それは狼牙が聴いたことある声だったのか。
 それとも、自分に掛けられた声ではなく、単にその声の主が誰なのか気になったので振り向いただけなのか。
 …………振り向いて、遠めだが確信する狼牙。
 たった一瞬前まで疲れ顔だった顔は一体どこに消えたのかと思うほど、その顔は穏やかで疲れなんて見えなかった。

「ゆうな……!?」
「ぱぁぱ~♪」

 他の誰でもない狼牙をパパと呼ぶ、穢れを知らない無垢で可憐な少女。
 とてとてー、とでも効果音が付きそうなほど非常に可愛らしい足取りで狼牙向かって走るその少女。
 名を旋風寺ゆうな。
 まだカントウ圏を完全制覇する前からの仲間である旋風寺京子自慢の一人娘だが、狼牙の娘ではない。
 京子とゆうなの間に血の繋がりはある。
 だが、狼牙との間に血の繋がりはない。
 ゆうなは京子と北斗の娘になるのだが、当のゆうなや狼牙は京子の旦那である北斗の顔を全く知らない。
 仲間になる前に一切面識がなかった狼牙はまだ分かるが、ゆうなにとっては自分の父親のことだ。
 だというのに、ゆうなは北斗のことを全く知らない。
 だが、ゆうなは京子に「父親に会いたい」とは一言も言ったことはない。
 幼いその身でもしっかり分かっているのだ。
 ――――北斗が既にこの世に居ないということを。
 それを言うと、母親の京子は困ってしまう。
 そのことをゆうなは分かっているからこそ、
 母親に似て心が優しい娘だからこそ、
 母親に心配かけたくないという思いがあるからこそ、
 ゆうなは誰からも好かれるような可愛い娘なのだ。

「ぱぁぱ~、どこ行ってたの~?」

 小さな足を目一杯使い、急いで走ったゆうなは、狼牙の腰に抱き着く。
 ……いや、必死に跳び付いた、と言ったほうが正しいかもしれない。
 そんな不安定な位置にしがみ付いた娘を、「ふふっ……」と穏やかに笑いながら抱き上げる狼牙。
 その表情はどう見てもホワイトファングと恐れられた獣の瞳ではなかった。
 古くから交友があるような人からも「……信じられない」と思われるような表情だろう。
 それは、一人の娘を愛しむ一人の父親の表情。

「こーら、ゆうな。俺のことは『ぱぁぱ』じゃないだろ…?」
「あっ、そうだった――――総長」

 よし、と抱き寄せたゆうなの頭をナデナデする狼牙。
 その様子は完全に親バカと化して……………いや、この場合バカ親……か。
 叱っているつもりなのだろうが、その表情は総長と思えるほどではなく、だらしなく緩みっぱなしだ。
 …………兎に角、誰がどう見ても仲睦まじい親娘のようにしか見えなかった。

「ゆうな。名児耶って覚えてるか?」
「………えーと……うーんと……………お、おぼえてないの」

 覚えてないことが悔しいのか悲しいのか、ゆうなはしゅんと項垂れる。
 だが、ゆうなほどの年齢の記憶ならそれも無理もない。
 毎日新しいことの発見で、覚えることが多すぎて、とても地名を言われても記憶が出てくるような便利な脳はしていない。
 うーんと一人唸って、必死に名児耶という地名から何かを思い出そうをしているゆうな。
 そんな可愛らしい“愛娘”の仕草にある種の癒しを憶えた狼牙は、

「そんな無理して思い出す必要なんてねぇよ」

 一瞬立ち止まり、ゆうなを肩車してから再び歩き出す。
 父親かオジサンか、その差は微妙だが、「そーらよっ……」なんて掛け声を上げてゆうなを持ち上げた狼牙。
 視界が一気に高くなったゆうなは思わず感嘆の声を噴き出した。

「わぁ………」
「今度暇が出来たときにでも一緒に名児耶に連れてってやるよ。そうすりゃ中々忘れ難くなるさ」
「うんッ!」

 ゆうなは茜色の空に一目惚れしたかのように、瞳を夕日に縛り付けていた。
 その表情を狼牙は決して見ることは敵わなかったが、それでも良かった。
 見なくとも、声を聞けばどう思っているかすぐ分かるからだ。

「……そういや、今日の仕事は終わったのか、ゆうな?」

 その問いに小さく頷くゆうな。
 勿論ゆうなの年齢で任せることは数少ないことで、一人前の仕事はないのだが。
 どんな辛いことでもゆうなは文句一つ言わず今日まで過ごしてきた。

 それは分かっているからだ。
 自分の居場所がここにしかないと分かっているからだ。

 それは認められたいからだ。
 狼牙を頭とした仲間の一員だと、認められたいからだ。


 そして、何より尊敬している母親に近づきたかったからだ。

「…………にしても、もう全国制覇が終わったんだから無理して働くことないんだぞ?」

 抗争が絶えなかったあの頃と違い、今狼牙たちの前に立ち塞がるのはある程度の残党たちしかいない。
 つまり、猫の手を借りたいほど人員不足だったあの頃と違い、今はゆうなのような幼い年齢の少女は普通の子供に戻っても良いのだ。
 狼牙はそれを望んでいるし、母親の京子も口では絶対に言わないが、絶対そう思っていることだ。
 一旦厳しくゆうなに言ってしまったので、今更辞めろとは言えないのだろう。
 感情には出さないが、内心ではそう思っているに違いない。
 なぜなら京子は心優しい女性であり、娘のことが何よりも大事な母親だからだ。

「…………ゆうな……?」
「…………………」

 一点を集中して見ているゆうなに、狼牙の言葉は届いていない。
 狼牙のナスビ頭の髪の毛をひしっと掴んでいるのだが、おそらく今はそれすら分かってないことだろう。
 視神経と筋肉神経が完全に切り離されたような―――いや、瞳とそれ以外の部位が全く別の人のモノのような。
 ゆうなという人格は今、瞳にしか表れてない。

 ――――駄目だ。完全に意識が切り離れてやがる。

 声が届いてないゆうなを見て、そう確信した狼牙。
 他人の声が聞こえないほど必死になって見ているモノとは一体何なのか…………狼牙はそう思った。
 だから、抱き上げたゆうなの―――それしか見えていない視線の先が気になり、愛娘の瞳の高さから見える“それ”を覗き込んだ。

 それは何てことない極々普通の二人組。
 鼻の下に少し髭を生やした、見た目からして誠実そうで優しそうな成年男性。
 そんな男性に肩車をして貰っている、まだ年端もいかない少女。
 歳の頃は、ゆうなと同じくらいだろうか。
 二人は楽しそうに喋りながら、狼牙とゆうなの視線に気付くことなく対岸線のアスファルトを歩いていた。
 その様子から、誰が見ても間違いなくある一つの関係が思い浮かぶことだろう。

 ――――――父娘。

 そう。
 まさにその光景は仲睦まじい父と娘の様子だった。
 他にその様子を説明しようにも、言葉が見つからないのは間違いない。

「………………………………ぱぁぱ」

 視界に見えなくなるまでそれを見ていた。
 そして祈るように小さく呟いた言葉は、たった一言。
 空に溶けてしまうようなそれ―――狼牙ではなく他の誰か・・・・・・・・・・に紡いだ言葉―――は、幼心にも悲しさが滲み出ていた。

「………………ゆうな。父親が恋しいか?」

 狼牙は思わずそう問い掛けそうになった。
 やはり頭で分かっていても、まだゆうなには父親は必要な年齢なのだ。
 京子と同じほど大事な存在である北斗という存在が、ゆうなには必要であり、それは狼牙では駄目なのだ。
 父親代わりというのはあくまで父親に近い存在であり、父親にはなれはしない。

 ――――何をバカなことを。そんなの分かりきってることじゃねぇか。

 自問自答して、自らの愚かさを知る。
 ゆうなのこと。
 北斗のこと。
 自分のこと。

「…………ぱぁぱ?」
「ん? 何だゆうな?」

 考えを纏めていた所為か、思ってた以上に時間が経っていたようだ。
 今度は狼牙自身に掛けられた、「ぱぁぱ」という言葉。
 ゆうなは今見た光景を必死に忘れようとしている。
 自分にとって大切な人というのは、京子と狼牙であるということを理解しようとしていた。

「かえろっ…?」
「……………………あぁ、そうだな」


 肩車をしたまま、狼牙は帰るべき場所へ足を踏み出した。

 場所はカントウ。

 聖城学園近くに陣取った一軒の家屋。

 家族と呼べる者の元へ。












「なぁ、ゆうな」

「……なぁに?」

「お前には父親がいねぇけどよ……」

「………………うん」

「……その分さ、京子が父親の分までゆうなに愛情を注いでるんだぜ…?」

「……………」

「それを分かってくれよな?」

「………………うん。ゆうな、わかってるよ」

「それから、な……………」

「ぱぁぱ……?」

「…………さ、寂しかったら、いつでも俺のことをパパって呼んでいいんだぞ?」

「…………………う……うんっ!」





 ――――狼牙は知らない。

 今、自分がどんな表情をしているのか。

 それがどれほど幸せそうな “親” の表情をしているのか、狼牙は知らない。





「――――――――狼牙」

 そして、その光景を後ろから見ていた女性が一人。
 終始見ていた彼女は、苦笑しながらその名を呟いた。

「…………全く、恥ずかしいならそんなこと言わなきゃいいのにさ……。フフッ、勝手に父親面しやがって」

 どもりながら口を吐いた狼牙の心情をすぐさま察知した。
 “あの” 斬真狼牙が恥ずかしそうに言った言葉。

「……アンタにはまだ少し早いんじゃないのかい…?」

 狼牙より少し年上の京子は、そう判断した。
 と言うより、“あの” 斬真狼牙だったら子供は何人出来るのだろうか。などと思ったりした京子。

「…………………でもね…………ありがとう、狼牙」





 ――――京子は知らない。

 今、自分がどんな表情をしているのか。

 それがどれほど幸せそうな “母親” の表情をしているのか、京子は知らない。







 ――――京子は知らない。

 狼牙の名を嬉しそうに呟いたときの自分の表情を、京子は知らない。

 それがどれほど幸せそうな “女” の表情をしていたのかも、京子は知らない。





 END



 あとがき

 プロット?何それ。手の思い動くまま。頭は何も考えず。無計画。
 など、選べる言葉はいくらでもありますが、このSSを通して伝えたい事は私にも分かりません。
 ただ、最後だけは無理矢理締めました。
 こういう形で終わらせるのは私の趣味です。
 ……………………物凄い強引な締め方な気もしますが、なるべく気にしないでください。
 当初は、狼牙×京子で何か書きたいと漠然とした思いはありましたが、プロットらしいプロットは作ってません。
 ですから、最後を読むまで狼牙×ゆうなだと思った人が絶対にいるはず。
 ………………まぁ、いいか。
 需要はほとんどないだろうし、読む人もいないだろうし。
 ちなみに後半がグダグダなのは毎度のことです。仕様です。気にしたら駄目です。
 途中で飽きたので後半は適当過ぎ。
 それが私の悪い癖ですね。
 …………何とかして治さないと。


 京子も好きですが、大番長ではカミラ、ウルルカ、静梨、神耶なども好きです。
 一番は久那妓かな。
 もしかしたら他のキャラの大番長SSも書くことがあるかもしれません。
 その日が来るか来ないかは、私のやる気と時間次第ということで。
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2005/07/26   短編     トラックバック-0   コメント-0

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